あなたはアメリカのアンダーグラウンド・ハウス・デュオDeep Dishのメンバーですが、今は2人ともオフを取って自分のプロジェクトに取り組んでいます。この経緯は? そしてプロデュースとDJingの創造性に関して言うと、どのような余地が生まれましたか?
Deep Dishは長い間いつも両サイドで多くの妥協をしつつも一つのビジョンをシェアしてきた。15年一緒にいた後のソロ活動だけど、ここでは、Deep Dishには必ずしも適していない音楽性やアイデアを試していくこともできた。同じことが僕のソロ・ギグにも言える。僕自身のビジョンの表現とプランに、自分のフォーカスを集中することができるし、今となってはとても自由に活動ができるようにもなった。けど、僕たちが近いうちにまた顔をあわせて、どうやって僕たちの音楽とギグにプラスしていくかのフレッシュな視点を持ち込めれば、Deep Dishはもっと強力なユニットになると思う。
Dubfire

Dubfireはグラミー賞を受賞し、4回のノミネート歴があるDeep Fishのメンバーです。ワシントンをベースに活躍するこのエレクトロニック・デュオは、マドンナ、マイケル・ジャクソン、ティナ・ターナーなどのアーティストのハイレベルなリミックスの数々で、メインストリームでも際立った成功をおさめました。その一方で、Carl Craigなどアンダーグラウンドで名のあるアーティストとのジャンルを繋げる制作やコラボレーションも活発に行い、アンダーグラウンドでの威信も失っていません。最近はソロ活動で世界を巡っているDubfire が、DJプレイ、ベルリン・ミニマル・サウンド、TRAKTOR SCRATCHへの移行、そして彼とDeep Dishの未来についてNative Instrumentsに語ってくれました。
あなたは最近のベルリンミニマルテクノ・シーンから大きな影響を受けたとはっきり分かりますが、どうやってこうした音楽を発見したのですか? そして、なぜそれほどまでに惹かれたのですか?
あの音楽は僕にとって目新しいものではないし、僕にずっと影響を与えてきたものの一部だ。けど、僕の個人的な好みはDeep Dishの音楽的な境界の内側に留めておかなくてはいけなかった。Kraftwerk、Manuel Gottsching、Klaus Shultz、Basic Channelなどのドイツのエレクトロニック音楽は、僕の音楽的発展の基礎だよ。けど、現在のもっと大きな枠のテクノジャンルでは、音がもっとディープで、スローで、ファンキーで、セクシーになったと思う。
あなたの最近のリリース「Emissions」は、Richie Hawtinのレーベル「Minus」からリリースされ、Beatportのミニマルチャートでは1位になりました。それだけではなく、ドイツではいたるところでかけられています。こうしたミニマルシーンでの急速なサクセスは驚きですか?
嬉しい驚きかって? もちろんだよ。けど、特定の音楽ジャンルに自分を合わせたことはないね。僕とRichieは数年来の友人で、彼の音楽とビジョンをいつもサポートしてきたし、僕の新しいソロ活動を通して、彼のレーベルに何か特別な貢献をしたかった。ただ、こういう風に発展するとは思わなかったし、こうしたリアクションには驚いているよ。これは特定の曲だけじゃなくて、僕がここ数年やってきたソロ作品全体に当てはまる。これだけアンダーグラウンド・スタイルの強い音楽がこんなに多くの人にアピールできるとは、プロデューサーとして嬉しいね。
「Emissions」を作った時、あなたは特定のレコードに影響されましたか? このトラックで何を得ようとしましたか? そのためにはどうやってサウンドとエフェクトを使ったのですか?
「Emissions」は1日で書いて、レコーディングしたんだ。これには自分でも驚いたよ。僕が作ったソロ作品全て、そして最近7年以上のDeep Dishの作品の大部分で僕のパートナーだったエンジニアのMatt Nordstromもね。グルーブのベースはループで、とてもミニマル、そしてその周りに、特定のクラブでもかかっているような雷のように聞こえる寒剤の衝風のサウンドを作り出したかったんだ。そんな音を聞かせるクラブはあんまりないけど、ぼくはそうした経験をトラックにはめ込むことができるようになりたかった。この3つの「Emission(放射)」はトラックを繋ぎとめる接着剤のようなものだ。
DJとしてこれまで長い間CDを回してきて、1年ほど前にラップトップベースのDJシステムに変更しましたね。なぜそうしようと決心したのですか?また、こうしたテクノロジーを使うに至っていないDJたちには何と声をかけますか?
手短に言うと、CDを焼いて(バーン中にエラーが起こることもあるし)、レーベルを作って、CDブックにまとめて、ギグのたびにそれを持ち歩くのが嫌になったんだ。もちろん空のCDもいつも用意しなくてはいけなかったし。僕のiTunesライブラリーを管理するだけだとずっと楽だろうと思った。僕のDJ仲間にもこうしたテクノロジーを薦めるようになった。変更した人たちはみんなとても喜んでいるから、これからもそうすると思うよ。
あなたがレコードを回し始めた頃と比べて、テクロノロジーによってDJブースで何が変わり、何が前進しましたか? ラップトップをDJブースに持ち込むと、この芸術形態から逸脱してしまうと思いますか? そして、もし申し分ないテクノロジーが登場したら、完全にソフトウェア/コントローラーを基盤としたシステムに移行すると思いますか?
僕はこれまでずっと、バイナル・ジャンキーだったから、週ごとの新リリースリストに数時間もかじりついていた頃のことを今でも懐かしく思うよ。無くて一番さびしいのは、カバーアートだね。そしてラップトップでDJing をすると、毎週たまっていく何百もの音楽の名前を覚えなくちゃいけない。けど、アーチストとして僕が思うのは、スタジオとロードで自分の想像性をもっと開花させてくれるテクノロジーを使うのは、自分のキャリアにとってとても大切だってこと。ラップトップDJingは、僕にとって大きな転換点だったし、完全に新しいパラメーターで制作できるようになった。言ったように、今でもハードウェアとソフトウェアの組み合わせで楽しんでいる。TraktorとパイオニアのCDJsを併用しているよ。
最近になってTraktor Scratchに変更しましたね。これについてはどのようなことを聞いていましたか? 前のシステムからはどうやって移ったのですか?
Pablo La Rosa(Native Instruments 国際マーケティング部長)が2007年にマイアミで開かれたWinter Music Conferenceで、僕のBeatportプールパーティー・セットの直後に、僕を文字通りNIブースに引っ張っていって、5分間プレゼンをしてくれた。そこで僕は仰天してしまったってわけさ。Traktorをマスターするのに最初はとても腰が及んだけど、何週間かギグをしただけですっかり慣れ親しんだよ。
Traktor Scratchに移ったた主な理由は?
本当に簡単な理由だよ。とても簡単なループ機能、マルチスクリーン・ビュー、ほとんど全ての機能に使える「ホットキー」。そしてエフェクトをもっと多く使うために外部コントローラーが使えること。僕はエフェクトが大好きなんだ。特に、リバーブの増強感がね。ブレークダウンの時のドラマチックなピークを作り出すのにとても役立つ。もっといいのは、自分自身のブレークダウンが作れるってこと。それに、シンプルなフックアップも気に入っている。
ソフトウェアとAudio 8 DJの音質についてはどう思いますか?
音質はSeratoと比べると、文字通り昼と夜ほどの違いがあるのが明らかだった。僕がTraktorをギグで使い始めた頃からね。SeratoのボックスでバイナルやCDをかけているDJにはなかなか同調できなかった。だって、音があまりにもデジタルで粗くて、レベルを調整するのが不可能に近かったから。Traktorだと、僕の320kbps のMP3がどちらかというとAIF やWAVのように聞こえる。
最近数ヶ月はTraktor Scratchを使ってツアーをしていますね。その中で大きなギグはありましたか? システムの信頼性とパフォーマンスについても語ってもらえますか?
そうだね、僕がやった中で大きいイベントは、Creamfields Buenes Airesで、1万から1万2千人ぐらい集まっていた。Traktorのパフォーマンスは素晴らしかった。スイッチを切り替えるために必要なものが備わっている。
最近ではTraktor Scratch のMIDI機能を使い始めて、あなたのFaderFoxコントローラー用のカスタム設定セットアップを使用しているようですが、これはソフトウェアとオーディエンスの間の相互作用にどういった影響を与えましたか?
Faderfox DX2を使うと、Traktorのエフェクトの使い方だけにではなく、僕自身のパフォーマンスとオーディエンスとのインターアクションにも多大な影響を与えるよ。シンプルなセットアップ、色でコード化されたボタン、シンプルなレイアウトが気に入っている。ラップトップDJはセットの間もモニターばかり見ているからオーディエンスとの関係をないがしろにしているといつも批判されているけど、Faderfoxのおかげでこんなこともなくなる。
Traktor Scratch をTraktor 3.3と併用することもありますか?
2ヶ月ぐらい前まで、僕は2年間ほどSeratoのユーザーだった。けど結局、色んな制限のせいでいらいらしてきたんだ。Seratoは、ヒップホップやスクラッチDJを優先するあまり、エレクトロニックをベースとしているDJのニーズを全く考慮していないんじゃないかって印象を持つようになった。だからTraktor Scratchに変わったんだ。使ってみて仰天したよ。インターフェースだけじゃなくて、内部エフェクトの結合、ルーピング、本当のウェーブフォーム・ディスプレイ、挙げればきりが無いけど、色んなことに驚かされた。もう一つ気が付いたのは、Seratoボックスと比べると、格段に音質が改善されていることだね。今となってはTraktor Scratchに慣れ親しんでいるし、Traktor 3もそろそろ試し始めている。とりわけ4デッキとカスタマイズが可能なインターフェイスが魅力的だから。
最近では自身のレーベル「SCI+TEC」をスタートしました。どこであなたのリリース作品が見つかりますか?
元々は、BeatportとiTunesでのみ入手できたんだけど、今ではドイツのデジタルレーベル「Zebralution」と提携したから、もうほとんど全てのダウンロードショップでも手に入るようになったよ。
どこのクラブでプレイするのが好きですか? その理由は?
過去数年で色々な素晴らしいロケーションを体験したけど、それでもたぶん日本の「Womb」だろうね。日本のオーディエンスはレベルが違うよ。本当に、空間に存在する愛を感じるし、彼らがまず音楽のためにそこにいるんだとよく感じるから僕の調子も上がるし、いいプレイができるようになる。
あなたのスタジオには、今はどのような機材がありますか? NIの製品では何を使っていますか? そしてその理由は?
それはMattに答えてもらったほうがいいだろう。 <Matt>スタジオの心臓部は、LogisとAbletonが作動しているApple G5だ。NIの製品では主に、MassiveとFM8をよく使うね。サウンドが卓越しているし、操作も簡単。Batteryも僕にとっては欠かせない。特にあのすごいサウンド・ライブラリーのせいでね。僕のハードウェア・セットアップはとてもミニマリスティックだけど、僕のFatso無しではやっていけないよ。
ほんの少しの基本要素で「ビッグな」サウンドを作らなくてはいけないから、ミニマルサウンドを作り出すのは非常に難しいですよね。その秘訣は?
それは僕が教えて欲しいよ(笑)。結局は、空間を満たすだけのエレメントを見つけるかどうかってことだね。だから、制作がとてもシンプルな一方で、相互にかけ合いながら雰囲気を創造していくようなエレメントが必要になる。いわゆる「ミニマル・トラック」を創造するのは、レイヤーを重ね合わせるのと同じぐらい難しくなる場合だってある。
あなたのGlobal Undergroundリリースに続く新しいミックス・コンピレーションは発表されないのですか?
特別なプランは無いけれど、Global Undergroundや、ドイツのあるレーベルと2008年秋に向けて何かをしようかという話もあるよ。



