DJを取り巻く環境はこの数年で大きく変化しました。活気あるオンラインコミュニティや新世代のDJたちの登場により、ストリーミング時代におけるミキシングのあり方そのものが変わりつつあります。完全新作のTraktor MX2は、まさにこの瞬間のために生まれました。初めて触れたその日から、表現力豊かで直感的なDJプレイを可能にします。S2が培ってきたポータブルで親しみやすいDNAを受け継ぎながら、現代のクリエイティブなニーズに応えるオールインワンのDJコントローラー。最初のセットから個性を際立たせることができるよう設計されています。
MX2のデザインを手がけたチームメンバーである、リード・プロダクトマネージャーのMichael Koczynskiと、シニアマネージャー兼プロダクトデザイン担当のRami Naayemの2人に話を聞きました。初心者から経験豊富なTraktorユーザーまでをどのようにサポートするのか、アンダーライトや触感に優れたジョグホイールといったデザインの選択がなぜ重要なのか、そして「誰もがアクセスできるパフォーマンス」という理念がどのように開発の原動力となったのかを語ってもらいました。
目次:
- 時代と環境が生み出したMX2のミッション
- Traktorの伝統と次世代デザインの融合
- デザインが変えるDJ体験
- ポータブルなコントローラーに凝縮されたプロ仕様の機能
- ジョグホイール、ブラウジング、FXコントロールの課題を解消
初代Traktor S2コントローラーの発売以来、ストリーミングサービスの台頭やオンラインプラットフォーム、そして次世代の意欲的なDJたちの登場によって、DJシーンは劇的に変化しました。DJ界におけるこうした変化は、MX2のデザインや機能にどのように反映されたのでしょうか?
このプロジェクトにおける社内のミッションは、あらゆる意味での「誰もがアクセスできるパフォーマンス(accessible performance for everyone)」という、極めてシンプルなものでした。
音楽ストリーミングへの移行は非常に大きな要因でした。Traktor Pro 4にBeatportストリーミングが直接統合されたことで、DJは事実上無限のライブラリを意のままに操れるようになりました。これは素晴らしいことですが、同時に「どうやって個性を際立たせるか?」という新たな課題も生み出します。もはや選曲だけの問題ではなく、そのトラックを使って何をするかが問われる時代になったのです。
だからこそ私たちは、iZotopeの定評あるRXテクノロジーを採用したStem Separationのような強力なツールをDJに提供することに注力しました。MX2は、あらゆるトラックを取り込み、そこに独自のクリエイティブな刻印を瞬時に残すための理想的なインストゥルメントとして設計されています。
さらに、「誰もがアクセスできるパフォーマンス」とは、クリエイティビティに対する認知的障壁を下げることも意味します。デバイス全体にフルカラーRGB LEDを採用することで、複雑な情報を瞬時に伝達できます。初めて使うユーザーでも、FXユニットがPattern Playerモードになっているかを確認したり、各チャンネルにどのMixer FXがアサインされているかを把握したりすることが、色の明確なメッセージを通じて直感的に判断できます。これにより体験全体がより直感的になり、より素早く、クリエイティブな表現が可能になります。

MX2の設計にあたり、既存のTraktorユーザーを引きつけつつ、よりパワフルなオールインワンのソリューションを求める新世代のDJにもアピールできる後継機を生み出すという課題に、どのように取り組みましたか?
私たちの指針となったのは、先ほども触れた「誰もがアクセスできるパフォーマンス」というミッションでした。これは、伝統と革新のバランスをとる上で完璧な羅針盤となりました。
熱心なTraktorコミュニティに向けては、彼らが培ってきた身体感覚(マッスルメモリー)を尊重しました。近年のX1コントローラーのデザイン言語を発展させ、すぐに馴染める論理的なグリッドレイアウトを維持しています。面取りされたエッジは、DJツールの道を切り拓いた象徴的な名機SL-1200へのさりげないオマージュです。私たちはその歴史に敬意を表しながら、未来を形作ることを目指しました。
新世代のDJに対しては、プロフェッショナルなDJプレイへの最も親しみやすくパワフルな入口を作りたいと考えました。そこで「オールインワン」というコンセプトが決定的に重要でした。かつては大型で高価なコントローラーにしか搭載されていなかった機能を統合することで、新たなDJたちに初日からプロ仕様のツールセットを提供しています。MX2は非常に奥深いポテンシャルを秘めたクリエイティブな楽器です。上達しても物足りなくなることなく、スキルとともに長く成長していける製品です。

新しいインダストリアルデザインには、半透明のボトムシェルと機能的なLEDアンダーライトが採用されています。この変更のきっかけとなった着想と、この新しい視覚的フィードバックがDJのパフォーマンスやクリエイティビティをどのように高めると考えていますか?
すべては「DJがどうすれば集中(フロー)を切らさずにいられるか?」というデザイン上の課題から始まりました。その答えは、文字通り「光と戯れること」でした。半透明のスモーキーグレーのシェルは、コントローラーが机の上に浮いているかのような印象を生み出す鍵となりました。
このデザインの選択によって、コントローラーがどのように情報を伝達するかを再定義する新たな機会が生まれました。アンダーライトは状況に応じたフィードバックを伝えるチャンネルとなったのです。これは単なる演出ではなく、実用的な機能を備えています。ループがアクティブなときは緑色に点滅し、トラックの終了が近づくと赤色でゆっくりと点滅(ブレス)します。画面を見つめることなく周辺視野で状況を把握できるため、ミックスに完全に没頭し続けることができます。
また、デバイス全体にフルRGB LEDを搭載できたことで、将来の可能性も大きく広がりました。DJはプレイスタイルに合わせてライトのカラーをカスタマイズできますし、今後も視覚的に楽しめる魅力的な体験を次々と展開していく予定です。MX2は、ユーザーとともに進化し続けるコントローラーなのです。
Traktor MX2は、Traktor Pro DJソフトウェアを完全にコントロールできるオールインワン・ソリューションと位置づけられています。これまで大型のプロ向けモデルにしか搭載されていなかったStemsモードやPattern Playerといった高度な機能の搭載と、携帯性や親しみやすさとのバランスをとるために、どのような重要な決断を下しましたか?
S2を通じて私たちが学んだのは、非常にポータブルなコントローラーである一方で、大型の4チャンネルフラッグシップ機を導入することなくクリエイティビティをさらに追求したいユーザーにとっては制限になり得る、ということでした。そこで私たちは、携帯性を維持しながら、Traktorの核となるパフォーマンス機能のすべてを直接手元で操作できるコントロールを2チャンネルシステムに組み込むことにしました。
MX2の設置面積はS2 MK3よりもわずかに大きくなっていますが、適度なサイズアップによって、機能面の大幅な充実を実現しました。
そのバランスが実現できたのは、私たちがハードウェアとソフトウェアを一体となったシームレスな体験として設計しているからに他なりません。私たちにとって、StemsやPattern Playerのような機能は、トラックをまったく新しいものへと作り変える可能性を解き放つ有意義なツールです。
開発における私たちの統合作業は、マルチモーダルなパフォーマンスパッドを通じて、これらの強力なトラック構築ツールを直感的かつダイレクトに操作できるようにすることに焦点を当てました。ボタンを1回押すだけで、ライブリミックス用の実践的なインターフェイスへと切り替わります。このアプローチにより、煩雑さや威圧感を与えることなく、圧倒的なクリエイティブのパワーを凝縮することができました。

DJを目指す人々が抱える主な悩み(ペインポイント)としてどのような点を特定し、改良されたジョグホイールや専用のブラウジングコントロール、柔軟なFXルーティングといった新機能がどのようにその課題を解決し、自信とスキルの向上につながるようにしましたか?
S2 MK3における最大の課題の1つは、FXコントロールの制限でした。現在では、FXやPattern PlayerはDJが個性を発揮し、ミックスにオリジナリティを加えるための極めて重要なツールです。MX2では、各チャンネルのMixer FXに加えて、両方のFXユニット用の完全なハードウェア・インターフェイスを追加しました。これにより、意欲的なDJのクリエイティブな道が劇的に広がり、基本をマスターした後もさらに深く探求できるようになりました。
トラック選びも改善したかった重要な領域です。なぜなら、選曲こそがDJプレイ中に最も頻繁に行われる操作だからです。私たちはブラウジングセクションを全面的に再設計し、プリリスニング、お気に入り登録、プレップリストのタグ付け用の新しいボタンを追加しました。また、ブラウザー表示を拡大してより素早くディグ(選曲)することも可能で、集中(フロー)を途切れさせることがありません。
もう1つ解決したかったのは、プレイ時の自信のなさです。DJを目指す人にとっての大きな壁は、アイデアの不足ではなく、実験したり新しいミキシングテクニックを試したりする自信の欠如であることが少なくありません。ジョグホイールは高精度のセンサー、溝付きのエッジ、握りやすい形状で再設計され、確実なグリップ感を提供します。これにより、ハードウェアが意図した通りに正確に応答してくれるという安心感のもと、よりタイトなスクラッチや高度なテクニックにも果敢に挑戦できるようになります。
まとめ
MichaelとRamiへのインタビューを通じて、伝統と革新のバランス、ブラウジングやFXコントロールといった実用的な課題の解決、DJの集中(フロー)を維持するためのライティングやジョグホイールの再考など、私たちのハードウェア開発に対するアプローチの舞台裏が垣間見えました。
Traktor MX2は、私たちの象徴的なDJコントローラーラインの次なるステップです。しかし、それだけにとどまりません。DJカルチャーがどこに向かっているのかを示す意思表明でもあります。初めて触れたその日から直感的に扱え、選んだDJとともに成長できる十分なパワーを備えています。MX2はクリエイティビティを犠牲にすることなく参入のハードルを下げ、すべてのDJセットを個性を輝かせるチャンスへと変えてくれます。
その携帯性と奥深さ、そしてTraktor Pro 4のエフェクトや機能とのシームレスな統合によって、MX2はすべてのDJへの招待状となります。失敗を恐れず挑戦し、自信を深め、自らのアートを世界へと届ける力を与えてくれるのです。