すべての音楽は何らかのリズムに基づいて成り立っており、音楽制作においてドラムはその中心的な役割を担います。ジャンルを問わず、ほぼあらゆる形式の音楽の基盤にはドラムが存在します。楽曲制作において、ドラムを打ち込んで楽曲の魅力を最大限に引き出すには、適切なツールとその使い方を把握しておくことが欠かせません。
このチュートリアルでは、ドラムパターンにグルーヴやバリエーションを加える方法、ドラムのクオンタイズやヒューマナイズの手法、そして楽曲を次のレベルへと引き上げる音楽的なフィルを追加する方法について解説します。
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NIのフラッグシップであり、万能なインストゥルメントプラットフォームであるKontaktを使って、一緒に進めてみましょう。
ドラムプログラミングとは?
ドラムプログラミング(打ち込み)とは、電子的またはデジタルのドラムサウンドを用いてリズムパターンを作成し、シーケンスを組むプロセスのことを指します。これは音楽制作における基本的な要素であり、正確で反復的なドラムパターンが極めて重要な役割を果たすエレクトロニック・ダンス・ミュージック(EDM)、ヒップホップ、ポップなどのジャンルでは特に重要です。プロデューサーやミュージシャンは、実際のアコースティックドラムを演奏する代わりに、ソフトウェアやハードウェアのドラムマシンやシーケンサーを活用して、緻密で多彩なビートを構築します。
ドラムの打ち込み方法
熟練したドラマーによる生の演奏は常に素晴らしい音源となりますが、実際に生ドラムをレコーディングする環境を整えることは、多くのプロデューサーにとって容易ではありません。一方で、ドラムマシンは生ドラムを必要としない数多くのジャンルを生み出してきました。そして幸運なことに、生ドラマーのサウンドを求めるビートメイカーやプロデューサーにも、適切にプログラミングすればその生々しいサウンドを再現できる、優れた選択肢が数多く存在します。
ここでは、エレクトロニックなサウンドのビートを制作する場合でも、アコースティックな「生演奏」の質感を再現したい場合でも、ドラムに迫力と生命感を吹き込むプログラミング手法をご紹介します。
ドラムプログラミングにおいて扱いやすい点の一つは、ドラムマシンを含め、大半のドラムキットが標準的な構成に準拠していることです。ドラムマシンは通常、一般的なドラムセットの基本構成を踏襲して作られています:
- キックまたはバスドラム
- スネア
- ハイハット(オープンおよびクローズ)
- タムやコンガ(通常は異なる音高の1〜4個のタム)
- シンバル(クラッシュやライド)
- その他のパーカッション(カウベル、シェイカー、ウッドブロック、ギロなど)
このチュートリアルで使用するツールにも、これらの要素がすべて揃っています。Battery 4のエレクトロニックキットに加え、DrumLabやStudio DrummerといったKontaktインストゥルメントとして提供されている優れたアコースティックキットのエミュレーションを使用した例をご紹介します。
それでは、クオリティの高いドラムプログラミングを行うためのステップを見ていきましょう。
1. 適切なドラムサンプルの選択
楽曲制作でドラムの打ち込みを始める際は、トラックのジャンルやサウンドに合った適切なドラムサウンドを選ぶ必要があります。カントリーの楽曲にエレクトロニックドラムを使ったり、エレクトロトラックにアコースティックドラムを使ったりすることはあまりないでしょう。そのため、プロジェクトに合ったサウンドを試聴して選ぶことが重要です。まずはサンプリングされたキットを探すことから始めるのがおすすめです。これらは多くの場合、先述したドラムキットの基本フォーマットに沿ったサンプルのパッケージになっています。気に入ったキットが見つかったら、サンプルを追加したり差し替えたりして、好みに合わせてカスタマイズできます。
エレクトロニックトラック向けに、Battery 4でキットを読み込んでみましょう。ここではKayla Kitを使用します。このキットにはキック、スネア、ハイハットなど、ドラムキットに求められる多彩なサウンドが揃っています。

そのサウンドの一部をお聴きください。
高音質なオーディオサンプルを選び、各サンプルのトリガー、ベロシティ、アーティキュレーションを細かくコントロールできるプログラムで管理されていることを確認しましょう。これによって、ドラムに躍動感と面白さを加えることができます。
こちらはStudio Drummerで読み込んだキットの一例です。これはSession Kit Liteで、Kontaktインストゥルメントの画面に表示されているようなドラムセットのサンプルで構成されています。

そしてこちらが、そのキットのサウンドです。
使用するサウンドが揃ったところで、実際にドラムパターンを作成してみましょう。
2. ドラムパターンの作成
すべての楽曲にハーモニーやメロディーの構造があるのと同様に、ドラムのグルーヴも存在し、そのグルーヴはドラムパターンによって決定づけられます。今回はDAWでドラムを打ち込んでいくため、制作しているトラックに適したパターンを作っていきましょう。
アコースティックキットでは、長年にわたり数え切れないほどのグルーヴの基盤となってきたクラシックなソウルパターンに似た、極めてシンプルなパターンを組んでみましょう。各小節の1拍目と3拍目にキックドラムを、2拍目と4拍目にスネアを配置します。さらに、各小節の1拍目のキックの直後にもう一度キックを追加します。このパターンの見た目とサウンドは次のようになります:

Batteryのテクノキットでも、同様にシンプルなパターンを作ってみましょう。テクノパターンの基礎を打ち込みます。小節の1拍目、2拍目、3拍目、4拍目にキックドラムを配置(四つ打ち)し、その合間の裏拍にハイハットを追加します。見た目とサウンドは次のようになります:

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3. ベロシティの違いでグルーヴにアクセントをつける
これらの基本パターンができたので、さらにブラッシュアップしていきましょう。まずはベロシティを変化させて異なるアクセントを加えます。これにより、グルーヴ感を維持しながらパターンの隙間を埋めることができます。
ここで追加する小さな音の一部は、グルーヴを高めるアクセントのない音、「ゴーストノート」と呼ばれることもあります。この言葉の意味は、伝説的ドラマーであるBernard Purdieによる以下の動画でわかりやすく解説されています。おそらく今まで見た中で最高の5分間のドラムレッスンになるはずです。
先ほど作成したアコースティックドラムキットのパターンに、さらなるニュアンスとグルーヴを加えてみましょう。パターンの合間に、ドラムを軽く叩く音をいくつか追加します。これは、適度なゆとりやオープンなグルーヴ感を持つドラムパターンに特に効果的です。

MIDIクリップを見てもわかるように、パターンの空間をいくつか埋めました。しかし、これらのノートはアクセントとなるノートよりもはるかに低いベロシティに設定されています。これにより、パターンの主軸となるアクセントを維持しつつ、控えめなノートでグルーヴ感を際立たせることができます。ミックス内の他の楽器をかき消すことなく、しっかりと支える役割を果たします。また、ノートを追加するだけでなく、いくつかのノートを削ることも行いました。これによりグルーヴに動きと意外性が生まれ、流動的で生き生きとした演奏感になります。
それでは、どのように変化したか聴いてみましょう。
4. ドラムのレイヤーでサウンドに厚みを出す
DAWでのドラムプログラミングの大きな利点の一つは、ドラマーが手足4本で行う演奏以上のことができる点です。複数のサウンドを同時にトリガーしてレイヤーし、強調されたサウンドを構築できます。これは特定の生演奏を再現する必要がないエレクトロニック系のジャンルで極めて効果的です。エレクトロニックミュージックでは、今回のテクノビートのように非常にシンプルなビート構造が採用されることが多いですが、繊細なバリエーションや動きを多彩に加えることができます。
今回のテクノキットでは、Batteryのサンプリングキットを使ってパターンをレイヤーし、先ほどと同様にベロシティの低いノートを追加します。これによりパターンのエネルギーが絶妙に補強され、うねるような推進力が生まれます。メインとなるアクセントノートは維持されつつも背景が満たされ、ビート全体が動き出します。レイヤーが出現したり消えたりすることで変化が生まれ、ループを飽きさせずに聴かせることができます。
追加のレイヤーを加えたサウンドをお聴きください:
DAW上でのこのパターンの見た目は次の通りです。

5. ドラムパターンのクオンタイズとヒューマナイズ
ドラムのリズムパターンを設定する際、時間を全音符、2分音符、4分音符、8分音符などに分割するという音楽理論の法則を用います。コンピューターやDAWを使ってこれらの分割を設定すると、時間が正確に分割され、各ノートが設定した時間分割にきっちり配置されます。ノートやリズムを正確なグリッドに揃える処理は、クオンタイズ(量子化)として知られています。ドラムをクオンタイズすると、正確無比なタイト感が得られ、ダンスミュージックに最適でDJにとっても極めて扱いやすいものになります。ほとんどのデジタルドラムマシンやサンプラーは、デフォルトで標準的なクオンタイズが適用されます。往年のアナログドラムマシンも基本的にはクオンタイズされていますが、耳ではほとんど知覚できない程度の微小な「揺らぎ」が生じることもあります。
しかし、人間の演奏は常に正確無比というわけではありません。私たちの心臓の鼓動でさえ寸分狂わぬタイミングを刻むわけではなく、多くの要因によって微妙に変化します。卓越したリズム感を持つドラマーであっても、テンポを柔軟に揺らしたり、テンポの中で意図的にタイミングをずらして演奏したりする柔軟性を備えています。こうしたタイミングの微細な揺らぎによって、ドラムパターンにより「ヒューマナイズ」された人間味のある質感を与えることができ、完全にクオンタイズされたデジタルツールとは一線を画す表現が可能になります。
先ほどのスタジオドラムパターンも、人間らしいニュアンスを加えることでさらに良くなります。グリッドからいくつかのノートを意図的に外して配置し、より人間味のある演奏感を加えてみましょう。ポイントとして覚えておきたいのは、アクセントとなる主要なノートはクオンタイズされている方が効果的であるという点です。合間の小さなノートでバリエーションとグルーヴを生み出しつつ、強めのアクセントノートがビートをしっかりと安定させる錨(アンカー)の役割を果たします。これと先ほど加えたベロシティの変化が組み合わさることで、ドラムパターンは絶妙に「人間らしい」質感になります。
タイミングに微妙な揺らぎを加えたパターンをお聴きください。
DAW上でのノートの配置は次のようになります。

今回のテクノの例では、ドラムを極めて機械的で安定したものにしておきたいところです。しかし、プログラムされた「スウィング」を少し加えることで、グルーヴを高めることができます。これにより、全音符や4分音符はグリッドにクオンタイズされたまま、他のノートをわずかに後ろへずらすことができます。この「スウィング」というタイミングの革新はアフリカ系アメリカ人のミュージシャンによって生み出され、ジャズ、ソウル、ロックをはじめとする20世紀のポピュラー音楽の多くにおいて中心的な特徴となっています。DAWでスウィングを設定すれば、親しみやすいグルーヴとマシン系ドラムならではのタイトで推進力のあるエネルギーとの完璧なバランスが得られます。
ノートの配置は次のようになります。

6. ドラムフィルを追加して展開を作る
トラック制作中には細かいディテールに夢中になってしまいがちですが、パターンが時間とともにどのように繰り返されているかを見渡すことも重要です。各ノートや小節ごとの細かなバリエーションも有効ですが、より大きな周期で変化する要素もパターンには必要です。ドラムパターンのアレンジにおいてフィルが不可欠になるのはまさにここです。いくつかの小節の終わりに少し変化を加えてから再び繰り返しのパターンに戻るようにすると、非常に効果的です。ドラマーやミュージシャンはこれを「フィル」と呼びます。これは文字通り、小節のまとまりや曲のセクションの終わりを示すために、わずかなバリエーションでパターンを「埋める(fill)」からです。
フィルは、少し枠からはみ出して、定着させたパターンから抜け出すチャンスと捉えるのが良いでしょう。パターンを数小節繰り返し、4小節のシークエンスの最後にある1小節でパターンを崩して変化を付けることができます。パターンのグルーヴを保ちつつも、ノートの順序を変えたり、別のサンプルを鳴らしたりすることで、次の展開が訪れたことを合図できます。
今回のテクノキットでは、パターンをコピー&ペーストして4小節分配置します。そして、最後の小節の終わりにバリエーションを持たせるために、ノートをいくつか移動させます。一部のノートを削除し、別の場所に追加しています。派手すぎたり大げさにドラマチックだったりするわけではありませんが、1つのサイクルが完了したことを簡潔に伝える合図になります。実際のサウンドを聴いてみましょう:
DAW上でのMIDIノートの配置は次のようになります。

スタジオキットでは、人間による生ドラムの演奏感を保ちたいので、ここではしっかりとしたバリエーションを加えます。ベロシティのアクセントを強調し、ノートの配置を変え、これまで使っていなかったサウンド、具体的にはライドシンバルやクラッシュシンバルを鳴らします。これらは次の小節まで余韻が残り、パターンのサイクルの切り替わりを強く印象づけられるため、多くのドラマーがフィルで好んで使用します。実際のサウンドを聴いてみましょう:
DAWに打ち込まれたMIDIノートは次のようになります。

ドラムパターンで楽曲に躍動感を
今回ご紹介したヒントは、楽曲制作におけるドラムパターンの作成や改善に役立つ方法のほんの一部です。アーティストやプロデューサーはそれぞれ、ドラムパターンメイキングにおいて独自のスタイルやアプローチを確立するための独自の方法を見出していくことでしょう。
ぜひ時間をかけてご自身でパターンを打ち込み、好みのキットやサンプルを見つけたり、クオンタイズされたパターンとルーズでヒューマナイズされたパターンのどちらが好みかを探ったり、どんなアクセントやレイヤーを加えたいか、あるいはどんなフィルを入れたいかを考えてみましょう。こうした選択の積み重ねが、あなた独自のスタイルやサウンドを築き上げる手助けになります。また、このチュートリアルで使用したサンプリングドラムサウンドはすべて、Battery 4およびKontaktに収録されていますので、ぜひチェックしてみてください。