デジタルハードウェアを使って初めて音楽制作が行われた頃、予期せぬエラーが頻繁に起こっていました。ハードウェア機器は、とりわけ音楽の文脈ではこれまでに聴いたこともないような衝撃的なノイズを発したものです。かつては機器の誤作動やデジタルエラーの副産物にすぎなかったグリッチサウンドですが、今では音楽の中で意図的に取り入れられ、多くの人に求められるサウンドへと進化を遂げました。グリッチエフェクトの手法を取り入れることで、あなたの楽曲に独特で未来的な美しさを吹き込むことができます。
本ガイドでは、「グリッチエフェクトとは何か?」という疑問に答えながら、ユニークでグリッチ感あふれるテクスチャーを作り出す様々なテクニックを紹介します。記事を読み終える頃には、ご自身の音楽で使えるいくつかのグリッチエフェクトのバリエーションが手に入っているはずです。また、ゼロから作るのが大変だと感じる方は、今回制作するサンプルをダウンロードして使うことも可能です。今回作成するグリッチエフェクトを組み合わせると、以下のようなサウンドになります:
では、グリッチエフェクトはどのようにして作ればよいのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
セクション一覧:
グリッチエフェクトとは?
グリッチエフェクトとは、デジタルエラーやスタッターによるアーティファクト、予測不能な音の破綻を意図的に利用して、風変わりなテクスチャーを生み出す手法です。サウンドを歪ませたり、引き伸ばしたり、細かく切り刻んだり、リサンプリングしたりして予想外の響きを作り出す、一種の「制御されたカオス」と言えます。
グリッチサウンドは元々、CDプレーヤーの誤作動やデジタルディストーション、破損したオーディオファイルなどから偶然生まれた副産物でした。やがてプロデューサーたちは、サンプリングやグラニュラーシンセシス、独創的なエディットを駆使して、こうした予測不可能な要素を意図的に再現するようになりました。現在では、IDMやグリッチホップ、エクスペリメンタルミュージックといったエレクトロニックミュージックのサブジャンルに欠かせない定番となっています。また、映画でも独特なSF的エフェクトとして広く使われています。
Aphex Twinの「Bucephalus Bouncing Ball」では、グリッチのリズムやデジタルアーティファクトを聴くことができます:
また、Autechreの「Gantz Graf」でも確認できます:
それほど過激ではない例として、Billie Eilishの楽曲でもグリッチエフェクトを聴くことができます。「bury a friend」の随所に散りばめられた音に耳を傾けてみてください:
グリッチ効果音の作り方
グリッチエフェクトは、サウンドをクリエイティブに破壊し、再構築することで生まれます。アプローチは多岐にわたりますが、ここではあらゆるDAWに応用できる基本的なテクニックをいくつかピックアップして紹介します。
このチュートリアルでは、Ableton Live内でKomplete 15のプラグインを使用します。お好みのDAWを使って一緒に進めてみてください。
1. 音源の選択
グリッチエフェクトをデザインする最初のステップは、音源となる素材を選ぶことです。例えば以下のようなものが挙げられます:
- ドラムループ – リズミカルなグリッチに最適
- シンセ – アトモスフェリックなグリッチと相性抜群
- ボーカルサンプル – チョップやスタッターエフェクトに最適
- フィールドレコーディング – 生々しく予測不能な要素を付加
今回の例では、Batteryで作ったシンプルなドラムループと、Massive Xの基本的なシンセパッチから始めます。
Brawlz Kitプリセットで作成した、エフェクトのかかっていないドライなドラムループを聴いてみましょう:
同様に、使用する基本的なシンセパッチも聴いてみてください。加工されていない三角波のサウンドです:
それでは、これらを解体していきましょう。
2. パラメーターの調整
グリッチ感のあるサウンドを手軽に得る方法の1つは、エフェクトをランダムに微調整することです。Massive Xでは、エフェクトパネルを使ってこれを行えます。まずSample + Holdを読み込み、mixを約90%に設定して、キートラッキングをいろいろと動かしてみましょう。

さらに、以下の設定でFolderを追加します:

現時点では、単体で完成された魅力的なサウンドを求めているわけではありません。後から効果的に活用できるテクスチャーやグレインの断片を探している段階です。
試行錯誤したサウンドをリサンプリングできるように、新しいオーディオトラックを作成しましょう。ここで録音したオーディオが、後ほど楽曲の中で活躍します。
その結果、かなり不穏な響きのサウンドが出来上がりました:
3. タイムストレッチによるデジタルアーティファクトの生成
タイムストレッチは、グリッチ手法の王道です。オーディオを本来の長さ以上に極端に引き伸ばすと、人工的なテクスチャーやデジタルの歪みが生じます。ファイルが破損したときのロボットのような異音や、ストリーミングのグリッチで音声がスローになったときのような音です。もちろん、これを音楽制作に応用すれば、奇妙なリズムや独特のテクスチャーによる予想外の瞬間を生み出すことができます。
まずはドラムループにこのテクニックを試し、その後、先ほどシンセから録音したリサンプリングオーディオにも適用してみましょう。
はじめに、BatteryのMIDIトラックをオーディオトラックに変換します。基本的にMIDIノート自体をタイムストレッチすることはできないため、オーディオ化しておくのがグリッチを作る際の鉄則です。
例として、ドラムループのワンシーンを抜き出してみましょう。ここではハイハットを取り上げます:
次に、サンプルのオーディオ編集タブに移動して「warp」をクリックします。その下にある「x2」ボタンを、DAWが許す限り何度もクリックしましょう。これにより、元の音が何だったかわからないほど変貌します。

好みのサウンドが見つかるまで、warpモードを色々試してみましょう。今回はtextureモードを選択し、grain sizeを2、fluxを25に設定します。
これにより、ハイハットのサウンドは以下のようになります:
ドラムループの他のパートや、リサンプリングしたシンセのランダムな部分にも同様の処理を行い、様々なwarpモードやgrain sizeを試してみましょう。
また、Kontaktのパワフルなサンプリングエンジンを使用して、ゾーンやキーでサンプルをタイムストレッチすることも可能です。
それでは、これらを細かく刻んでいきましょう。
4. カット、ペースト、再配置
手作業でオーディオを切り刻み、細かく断片化していきましょう。
ドラムとシンセのリサンプル素材をDAW上で細かくスライスします。そして、それらの切り刻んだ素材を並べ替えて、リズミカルなグリッチを構築していきましょう。
バリエーションを持たせるために、以下の工夫を行います:
- 一部のスライスをリバース再生する
- ランダムなセクションのピッチを上げ下げする
- 半端な長さでカットしてタイミングを崩す
サンプルを細かく刻んで大胆に並べ替えると、このようにまとまり始めます:
切り刻んだサンプルを使って、リズミカルなモチーフを反復させてみてください。この手法を用いることで、グリッチエフェクトを完全にコントロールできるようになり、単なるランダムなノイズではなく意図を持ったサウンドに仕上げることができます。
5. サチュレーション&ディストーションの追加
グリッチシーケンスの形が見えてきたところで、いくつかのオーディオエフェクトを使ってサウンドを汚していきましょう。
刻んだシンセにまず追加するのは、強力なビットクラッシャーであるBiteです。Polyesterdayプリセットを読み込み、少し調整を加えます:

さらに面白くするために、BiteのmixノブにLFOをマッピングします。これにより、ループ全体を通してビットクラッシュの効き具合が常に変化し続けます。

6. 簡単なアレンジを組んでグリッチの動きを確認
さらにシンセとサブベースのレイヤーを追加し、制作したグリッチサウンドを短いトラックとしてアレンジしてみました。完成したサウンドを聴いてみましょう:
制作したグリッチエフェクトをダウンロード
自分でグリッチエフェクトを作る準備がまだできていなくても心配いりません。本チュートリアルで作成したグリッチエフェクトをそのままダウンロードして、ご自身のプロジェクトに取り入れることができます:
オリジナルのグリッチエフェクト作りに挑戦
グリッチエフェクトは、楽曲に予測不可能な要素を取り入れるための優れた手段です。手作業でのスライスや極端なタイムストレッチ、リアルタイムモジュレーションを駆使して、音楽に実験的なスパイスを加えてみましょう。
さらに強力なサウンドデザインの可能性を追求したいなら、Komplete 15が最適です。Massive Xによるサンプルの過激な加工から、Biteによるビットクラッシュまで、独自のグリッチテクスチャーを構築するための多彩なツールが揃っています。
Komplete 15を使って、今すぐグリッチエフェクト制作を始めましょう。