エフェクトを活用すれば、DJはミックスに独自のシグネチャーサウンドを加え、クリエイティブかつユニークなスタイルでミックスできるようになります。TRAKTORの最大の特長のひとつは、多彩で先進的なエフェクトが多数搭載されている点です。これらのエフェクトを駆使することで、DJは自身の音楽やミックスに際立った個性を刻み込むことができます。TRAKTOR PRO 3で利用可能なミックスエフェクトの最適な活用法について、詳しく見ていきましょう。
新しいMixer FX
TRAKTOR PRO 3には、Deck FX(Single FXおよびGroup FX)とMixer FXの2種類のエフェクトが用意されています。
Mixer FXはTRAKTOR KONTROL S4に搭載されたワンノブ・エフェクトで、ダイナミックな変化を生み出すように設計されています。Reverb、Dual Delay、Noise、Time Gater、Filterなどの多彩なエフェクトが用意されています。直感的に操作できるこれらのユニークなエフェクトは、TRAKTORのDeck FXと重ねて使用することで、まったく新しいサウンドの可能性をもたらします。

Deck FX
TRAKTORには40種類以上の高品質なエフェクトが搭載されており、Single FXまたはGroup FXとして使用できます。Singleモードではエフェクトのパラメーターを緻密にコントロールでき、Groupモードでは複数のエフェクトをスタックしてエフェクトチェーンを構築できます。Preferencesを開き、「Effects」をクリックして「FX Unit Routing」で「2 FX Units」または「4 FX Units」を選択します。「FX Panel Mode」では、各FXユニットごとに「Single」または「Group」を選択します。ここではFX 1とFX 2に「Single」を選択しましょう。

Single FX
まずは各エフェクトがどのようなサウンドを生み出すか把握しておくと良いでしょう。ここでは、TRAKTORのDeck FXを個別に使いこなすためのヒントをいくつかご紹介します。
Delay
TRAKTORのDelayはパワフルなエフェクトで、Filter、Feedback、Rateの各コントロールを備えています。Filterの下にある「RST」(Reset)ボタンを押すと、Delayがデフォルト状態、またはTRAKTORのFXスナップショットで保存された設定にリセットされます。Feedbackの下にある「FRZ」(Freeze)ボタンを有効にすると、トラック再生中に新しいオーディオのサンプリングが停止し、フィードバックが最大値に固定されます。Rateパラメーターの下にある「SPR」(Stereo Spread)ボタンをオンにすると、ステレオ感の広がったディレイ効果が得られます。
Delayの実践的な使用例をいくつかご紹介します:
FX Unit 1をSingleモードに設定し、Delayを選択します。エフェクトを適用したいトラックのFX 1ボタンをオンにし、Dry/Wet(D/W)の下にあるOnボタンをオンにします。D/Wは10時方向(約30%)あたりに設定すると良いでしょう。Filterを一番左まで回し切り、Feedbackを50〜60の間に設定し、Rateは任意の値にします。FRZ(Freeze)ボタンをオンにして、Filterを左から右へ(0から約50へ)動かします。Filterを完全に左へ回し切った状態では、無限のフィードバックループが生まれます。このFRZテクニックは、Delay T3、Ramp Delay、Tape Delayでも活用できます。

DelayのStereo Spreadは一味違うサウンドを生み出し、クリエイティブな表現に役立ちます。Stereo Spreadをオフにした状態のDelayサウンドを確認するには、Filterを50、Feedbackを50に設定し、SPRボタンをオフにしたままRateを変更してみてください。
次に、FilterとFeedbackを50のまま、SPRボタンをオンにしてRateを変更してみましょう。サウンドが劇的に変化するのが実感できるはずです。
Delay T3
Delay T3は、トラックに個性と彩りを加えるのに最適なTRAKTOR自慢のエフェクトです。このエフェクトは、フレーズの終わりの4小節や8小節にかけると特に効果的です。Delay T3は独特の歪みとタイムストレッチ感を伴う効果を生み出し、Richie Hawtinをはじめとする多くのTRAKTORアーティストのセットでも頻繁に耳にすることができます。
Delay T3を使用するには、エフェクトをSingle FXユニット(例:FX Unit 2)にロードし、トラック上の対応するFXをオンにします。Dry/Wetを10時〜11時方向(30%〜40%の間)に、Feedbackを50%〜60%の間に設定します。Rateの下にあるFree Run(FR.R)ボタンをオンにし、約0.32〜0.33からスタートしてRateノブを約0.40まで回します。FR.Rボタンをオンにするとディレイタイムのクオンタイズが解除され、Delayの動作中にこの値を動かすことで、ピッチやリズムのユニークなバリエーションが生まれます。

Delay T3を使いこなすコツは、ノブをごくわずかに動かし、ビートに合わせてOnボタンや対応するFXユニットボタンを押してエフェクトをオン/オフすることです。これは、TRAKTORにマッピングされたコントローラー(Kontrol X1やその他のMIDIコントローラーなど)を使うと最も簡単に行えます。トラックのフレーズ最後の4小節または8小節にDelay T3を適用し、パフォーマンス中にこのパターンを1〜3回繰り返してみましょう。
他にもおすすめの設定として、Filter: 0.40、Feedbackは50〜65または70の間に設定してみてください。Delay T3のFilterを動かして、異なる質感のサウンドを試してみるのもおすすめです。例えば、Filterを38〜39あたりからスタートし、Rateを下げながらFilterを上げていくといったアプローチが効果的です。
スナップショットの保存
スナップショットを作成することで、エフェクトの設定を保存できます。保存された設定は、そのFXをロードするたびに自動的に読み込まれます。スナップショットを保存するには、エフェクトの下にある数字ボタンをクリックし、「Save Snapshot」をクリックします。エフェクトパラメーターを変更した後にRSTボタンをクリックすると、コントロールがスナップショットの設定にリセットされます。

Group FX
Group FXを作成してTRAKTORのFXを重ねることで、斬新で圧倒的なエフェクトを生み出すことができます。TRAKTORのPreferencesで「Effects」をクリックし、「FX Panel Mode」でFX 1とFX 2(必要に応じてFX 3と4も)にGroup FXを選択します。ここでは、TRAKTORでカスタムFXチェーンを構築するためのアイデアをいくつかご紹介します。

Gater / Filter:92 / Iceverb
トラックにパーカッシブな要素と面白みを加える、非常に効果的な組み合わせです。まず、FXユニットにGater、Filter:92、Iceverbをロードし、各エフェクトをオンにします。D/Wを完全に下げ、GaterとFilter:92を約60%に、Iceverbを完全に下げた状態に設定します。D/Wをゆっくり上げていくと、チェーンの効果がはっきりと現れ始めます。D/Wの位置を固定したまま、Iceverbを少しずつ上げていくと、サウンドに空間の広がりと風のような効果を加えることができます。Iceverbの上げ下げはお好みで調整し、Filterを動かしてさらにエフェクトに変化を加えてみましょう。

Beatmasher / Transpose Stretch / Reverb
Transpose Stretchによってオーディオのピッチが上下するため、トリップ感あふれるサウンドを生み出す組み合わせです。Beatmasherを約60〜70%(1/16)、Transpose Stretchを50%、Reverbを約30〜40%に設定します。チェーン内のすべてのエフェクトをオンにし、D/Wを上げてから、Transpose Stretchをごくわずかに上げていきます。この組み合わせの最大のポイントは、Transpose Stretchを細かく動かすことです。急激に上げすぎると、変化が極端になりすぎる場合があります。筆者の例では、Transpose Stretchをゆっくりと上げ、その後ゆっくりと下げました。エフェクトをフェードアウトさせるには、Transposeを下げながらD/Wも下げてみてください。

Delay / Phaser Flux / Reverb
Delay、Phaser Flux、Reverbを組み合わせるのもおすすめのチェーン構成です。チェーン内の3つのエフェクトをすべてオンにし、D/Wノブを徐々に上げていきます。同時に、Phaser FluxとDelayも少しずつ上げてみましょう。このタイプのエフェクトは、楽曲の長い展開セクションにかけることで、風が吹き抜けるような雰囲気を生み出すのに適しています。スケール感のある広がりのあるサウンドが得られ、適用するとトラック全体のムードを一気に変化させることができます。

Reverb / Delay T3 / Digital LoFi
多彩な表現力を持つDelay T3を組み込んだ、ユニークなエフェクトチェーンです。まずはチェーンのD/Wを完全に下げ、Reverbを25〜30%、Delay T3を約75%、Digital LoFiをほぼ完全に下げた状態(-0.99%)に設定します。チェーンのD/Wをゆっくりと上げ、Delay T3を一度最大まで上げてから徐々に下げてみてください。Reverbをほんの少し足し、Digital LoFiを上げます。Digital LoFiはミックスに強いディストーションを加えやすいため、控えめに使用するのがコツです。このチェーンのバリエーションとして、Digital LoFiの代わりにチェーンの最後へFilterを配置するのもおすすめです。Filterを使えば、全体のサウンドを整えて引き締めることができます。Filterを下げながら、Delay T3を上げ下げしてみてください。

ワンノブ・エフェクト
TRAKTORには、ノブ1つでコントロールでき、エフェクトリストで名前の横に(M)と表示されているエフェクト群があります。その中でも筆者のお気に入りは、Zzzurp、Stretch (slow)、Dark Matterです。使い方はシンプルで、D/Wを上げて各エフェクトの専用ノブを回すだけです。それぞれのエフェクトに独自のスイートスポットがあり、練習を重ねることでセットの完成度をさらに高めることができます。ぜひすべて試して、ご自身のスタイルに合ったものを見つけてみてください。

TRAKTORのエフェクトの使いこなしを学ぶことは、DJが音楽に自分だけの個性を吹き込むための確かな力となります。センス良く巧みに活用すれば、TRAKTORのエフェクトは優れたミックスを圧巻のパフォーマンスへと昇華させることができます。まずはエフェクトを1つずつ試し、それぞれの多彩な使い方を把握しましょう。スキルを高めながらTRAKTORでエフェクトチェーンを構築し、DJセットに取り入れてオリジナルのスタイルを創り上げてください。
本記事で使用されているサンプルは、以下のSounds.comパックから引用されています: