シンセシスといえば、多くのプロデューサーにとって馴染み深いのは減算方式(サブトラクティブ)でしょう。これは様々なオシレーター、エンベロープ、フィルターによって音声信号を減衰させていく手法です(60年代や70年代のクラシックなアナログシンセサイザーを思い浮かべてみてください)。このアプローチでは、元の信号の音色やトーンをある程度予測可能な形で変化させることができるため、結果を予測しながら音作りをしたい場合に最適です。
一方、より実験的な探求を目指す方には、FM(周波数変調)シンセシスが適しています。あるサウンドの周波数を別のサウンドで変調することで、倍音成分に富んだハーモニックなサウンドから非整数倍音を含む不協和音まで、極めて複雑な音色を生み出すことができます。この実験的な手法では最終的な出力を予測することが難しく、時には驚愕するようなサウンドが生まれます。しかし、FMアンサンブルの予測不能で不安定とも言える挙動の裏には、明らかなメリットがあります。この「計算された予測不可能性」を活用することで、豊かで質感のある広大なハーモニクス・スペクトラムが手に入り、楽曲を大きく生まれ変わらせることができるのです。
今回は、REAKTOR User Libraryから、優れた使い勝手を誇る5つのFMアンサンブルをご紹介します。王道のマルチオペレーター・シンセからドラムマシン、パーカッションシンセ、刺激的なサウンドジェネレーターまで、どれもダイナミックな音の探求に最適なラインナップです。それぞれの進化系アンサンブルの特徴をチェックし、リンクから無料でダウンロードしてみましょう。
なお、これらを使用するにはフルバージョンのREAKTORが必要となりますので、あらかじめご確認ください。
Dream Phase Machine

Tana Barbier制作のDream Phase Machineは、心地よく共鳴するドローンを生み出す複雑な内部構造を備えたDXスタイルのFMシンセです。質感のある粗さとサイケデリックな躍動感を兼ね備えたこのメタモルフィック・シンセは、時間差で立ち上がり減衰するエンベロープを備えたモジュレーション可能なディレイを搭載。ダイナミックな動き、奥行き、空間の広がりを生み出し、スペクトルを進化させる圧倒的なサウンドツールとなっています。
FM Polynator V3

Doron Sadja制作のFM Polynatorは、FMシンセシスでお互いをクロスモジュレーションする4つのドラムで構成された、パワフルなポリリズムFMドラムマシンです。一新されたインターフェイスと強力なランダマイズ・エンジンを誇るこのアップデート版では、各ドラムサウンドにPitch、Envelope、Filter、FM LFO、Pitch Modulatorの各コントロールが備わっており、最大限のモジュレーションが可能です。非常に実験的なアンサンブルですが、ポリリズムが複雑になりすぎてもSequencer Restarterを押せばリセットできるので安心です。
FM Explorator

先ほどの圧倒的な音の複雑さとは対照的に、Doron Sadjaが手がけたもう一つの作品は、驚くほどシンプルな2オペレーターのFMシンセサイザーです。すっきりとわかりやすい操作系に加え、ヴィンテージなレトロゲーム風のインターフェイスも魅力的で、FM Exploratorは楽しく直感的に操作できます。さらに偶発的なサウンドを求めたいなら、Exploratorロゴの上にある手のアイコンをハイタッチ(クリック)して、すべてをランダマイズしてみましょう。
BoooMBox

Colin Dunkerley制作のBoooMBoxは、クラシックなリズムマシンから最新のテクノやエレクトロニカのドラム/パーカッションまで、幅広い音作りに対応する4パートのFMドラムマシンです。シンセとシーケンサーの両面を持つこの革新的なインストゥルメントのエンジンは、シンプルな2オペレーターのFMシンセとノイズで構成され、シーケンスと2つのLFOによって躍動感あふれるサウンドを生み出します。ヴィンテージサウンドを好むクリエイターや熱狂的なテクノファンにとって、まさに理想的な制作パートナーです。
Random - One-Button Synth

一期一会の実験に特化したTom Jarvis制作のRandomは、ボタンを押すたびにまったく新しいプリセットを生成するワンボタン・シンセです。「インスピレーションを得ること、そしてシンセの仕組みを探求すること」を目的に設計されたこの徹底的に一過性の音源は、FMシンセシスを体験し、その無限の音の可能性に親しむのに最適です。ただしプリセットの保存はできないため、一度通り過ぎたサウンドは二度と戻らない点にご注意ください。
Random – One-Button Synthをダウンロード
魅力的なコンテンツはこれだけではありません。インストゥルメント、エフェクト、シーケンサーなどの膨大なアーカイブが揃うUser Libraryもぜひチェックしてみてください。特におすすめの作品を見つけたい場合は、このブログの特集シリーズをご覧ください。その名の通りFree Stuffセクションにまとめて掲載されています。
サウンドデザイン:Konstantin Grismann