The MidnightのTim McEwanは、現代のソフトウェアが持つ緻密さと往年のレコーディング技術が持つ質感のバランスを取りながら、職人のようにプロダクションに向き合っています。
これまでで最も野心的なプロジェクトとなった『Syndicate』において、彼はクラシックな温かみと現代的なパンチを結びつけるワークフローを構築しました。そのプロセスの中核を担ったのがPlugin Allianceのツール群であり、ミックスの開放感と音楽性を損なうことなく、ドラム、ベース、ステレオ音場を形作っています。
全17曲にわたる『Syndicate』は、アナログシンセのドラマ性とシネマティックなアレンジメントをデジタルの精密さで見事に表現しています。McEwanによるコンプレッサー、エンハンサー、テープスタイルのサチュレーションの使い分けが、アルバム全体の統一感を保ちながら各トラックに固有の個性を与えています。
その結果、壮大でありながら親密さも感じさせ、ヘッドホンで聴くのに十分な繊細さと、フェスのステージを揺らす力強さを兼ね備えた作品群が完成しました。
目次:
- Plugin Allianceとともに作り上げた『Syndicate』
- パンチを生み出す中心的なツール
- 広がりとステレオの動きのコントロール
- 温かみを加えるアナログスタイルのプラグイン活用法
- アナログエミュレーションから新しいプロデューサーが学べること
- ミックストールとアレンジの判断のバランス
本インタビューでは、それらのプラグインが彼の日々のワークフローにどのように組み込まれているのか、ミックスにおける広がりとコントラストをどう扱っているのか、そして若手プロデューサーがこれらのツールを実際に触って探求することで何を学べるのかを紐解きます。
『Syndicate』はこれまでで最も野心的な作品のひとつです。これほど大規模なアルバムを制作する日々のプロセスにおいて、Plugin Allianceのツールはどのように役立ちましたか?
Plugin Allianceのラインナップは本当に奥深くて、僕もたくさんのプラグインを持っています。
多くのトラックで、ドラムバスにADPTR Sculptを使いました。これはパラレルコンプレッションを施し、ドラムのトランジェントを処理する上で、まさにオールインワンの役割を果たしてくれます。場合によってはマスターバスに挿すこともありました。全体を緩やかにコンプレッションしつつ、トランジェントをコントロールしてパンチを維持しながら、微小な音成分を持ち上げてミックスの前面に引き出し、存在感を大幅に高めるためです。

SPL Transient Designer Plusも大好きです。とてもクリーンでシンプルに使えるトランジェントデザイナーで、もう何年も愛用しています。また、SPL Vitalizer MK2-Tも使っています。非常に優れたドライブ/サチュレーションユニットとして機能してくれるんです。ドラムバスやキック、スネア、時にはマスターバスにごく薄くかけることもあります。それと、Vertigo VSC-2コンプレッサーもお気に入りですね。

あれは本当に透明感のあるコンプレッサーです。ボーカルからシンセ、バス、ベースに至るまで、あらゆるものに使ってきました。ピークを抑えて全体を緩やかにコンプレッションし、タイトにまとめることもできますし、全体をしっかりコントロールした上でメインレベルを持ち上げ、存在感を際立たせることもできます。非常にシンプルでクリーン、そして素晴らしい音がします。
Tim McEwanからのプロのアドバイス:ミックス中はマスターバス全体をモノラルにしてみましょう。すべてをセンターに集めることで、どの部分が濁っていたりぶつかり合っているかが明確になります。
いつも同じ定番のプラグインを使うことが多いですか? それとも曲ごとの雰囲気によって変わりますか?
いつも同じものを使う傾向はありますが、今回のアルバムではミックスをじっくり掘り下げる時間と余裕があり、時間を贅沢に使うことができました。

そのため、いつもより少し探求を深めることができました。最近Plugin Alliance経由でbxのTrue Peakリミッターを購入したのですが、これが実に素晴らしいリミッターなんです。ずっと色々なリミッターを探し求めていたのですが、万能で優れたリミッターですね。bx_clipperも使っています。僕はクリッパーが大好きで、これらは常によく手を伸ばしたプラグインです。

ほかにもエンハンサーやbx_townhouse bus compressor、高域の「Air」バンドを付加するMäag EQ4、そしてAcme Opticonコンプレッサーを持っています。Acme Opticonはベースなど、しっかりコントロールしつつ信号にグリット感やダーティーさ、サチュレーションを加えたいあらゆるものに最適です。
いつものお気に入りプラグインもありますが、今回のアルバムでは探求するための時間と余裕がたっぷりとあり、とても楽しかったです。
複数のシンセレイヤーを重ねる際、広がりや空間をどのように処理していますか? また、アナログエミュレーションのプラグインは、完全にデジタルな同種のツールよりもその役割をうまく果たせると考えていますか?
僕は昔から非常にワイドでステレオ感のあるミックスを目指してきたので、ほとんどすべての音にコーラスをかけてしまいます。音の広がりが大好きなんです。ですが最近では、コントラストを保つために、いくつかの要素を非常にドライかつ完全にモノラルにする実験を増やすようになりました。すべての音が広がっていると、遠近感が失われてしまうからです。

ですから、すべてが広がっている中に、ストレートなモノラルで全体を突き抜けてくるサウンドがひとつあると、ミックスが引き立ちます。あるいはその逆で、多くの要素を非常にドライにしておき、そこにシマーリバーブとコーラスを効かせた巨大なパッドを1つ加えると、ミックスが一気に開いて耳の中で心地よく爆発するような効果が生まれます。そうしたコントラストを活かすアプローチは非常に効果的で、ここ数年は特に多用しています。
Tim McEwanからのプロのアドバイス:ドラム、ギターのプラック、ベースなどのトランジェントピークをわずかに、かつ透明感を保ってコントロールするために、コンプレッションの前にソフトまたはハードクリッピングを使いましょう。ボーカルへのソフト/ハードクリッピングは避けてください。
レトロな質感と現代的な洗練さのバランスを取る際、アナログスタイルのプラグインはそのバランスを保つ上でどのような役割を果たしていますか?
非常に大きな役割を果たしています。僕はよく、テープサチュレーションやテープエミュレーション(ムラのあるテープレコーダーのようなもの)を加え、ざらつきやダーティーさを足して、音に使い込まれたような味わいを持たせています。きらびやかでクリーンなサウンドもあり、それらはミックスの中でそのまま置く必要がありますが、楽曲の土台となるトラック群には、少し汚れたり埃っぽかったり、ムラやヨレのある要素を必ず加えたいと思っています。人間の耳は不完全さに惹かれるものだからです。
ここ30年のデジタル革命によって、あらゆるものが非常にクリーンになりました。実に多様なことができるようになりましたが、音楽業界全体を見渡すと、ヒスノイズやノイズ、不完全さなど、少し完璧ではなく少し粗削りなサウンドを取り戻そうとする動きがあちこちで見られます。耳や脳はそうしたものに引きつけられますし、僕が大好きな奥深い複雑さを生み出してくれるのです。
Tim McEwanからのプロのアドバイス:広がりとコントラストを活用しましょう。コーラスをワイドに広げる一方で、主要な要素をいくつかドライかつモノラルに保つ(またはその逆にする)ことで、ワイドになった瞬間が鮮烈に「爆発」します。
アナログコンソールに一度も触れたことがないような若いプロデューサーは、こうしたエミュレーションを使うことで何を学べるでしょうか?
これらのプラグインを、サウンドを形作るための道具として使えるのだと学べるはずです。
学ぶための唯一の方法は、実際に触ってみることです。プラグインを色々いじり倒して、その動作方法や、特定の信号やサウンドに対してどう反応するかといった個性を深く知ることです。すべてのプラグイン、あらゆるコンプレッサー、あらゆるEQ、サチュレーションユニット、リバーブには違いがあり、入力する音に対してそれぞれ異なる反応を示します。あるプラグインの長所と短所を理解し、手持ちの選択肢が広がっていくと、制作は本当に楽しくなります。
僕は常に使うツールを分散させるようにしています。シンセに関しても、トラックごとに異なるメーカーのシンセを使うようにしています。あるトラックにはSerum、別のトラックにはSpire、さらにDivaやTALなどです。すべてにSerumを使うこともできますし、それでも素晴らしいサウンドになりますが、同じマシンとアルゴリズムから生まれる以上、同じような音色付けが施されてしまいます。様々なツールを組み合わせることで、メーカーやシンセ、プラグインごとに少しずつ異なる色合い、質感、テクスチャーが加わり、結果的によりすっきりとしたミックスに仕上がるのです。
ミックスにとっても、そして未来の自分にとっても、大いに助けになるはずです。それぞれの音が異なる形でしっかりと独自の居場所を確保できるようになるからです。
セッションを振り返ってみて、最終的な「一体感」や「キャラクター」のうち、アレンジや演奏そのものに対して、ミックストール全体が果たした役割はどれくらい大きかったと思いますか?
ツールとミキシングプロセスの貢献度は非常に大きいです。
The Midnightを始めて以来、僕のミキシングのスキルと知識は大きく進化しましたし、今では使っているツールをはるかによく理解できるようになりました。使いこなせるようになったことで、制作が格段に楽しくなっています。
僕は常に一歩引いて、そのサウンドの役割は何なのか、何を達成する必要があるのかを問いかけ、それを実現するための最適な方法を見出すようにしています。ミックスの中で際立たせたい尖ったベースがある場合、コンプレッションとEQを組み合わせるべきか? どれくらい色付けできるか? 本質的な良さを保ちながら、ミックスの中で独自の居場所を与えつつ、シンセやベースの個性をどこまで引き出せるか? すべては特定のサウンドのためのスペースを作り出すことにかかっています。僕にとってのミキシングとはそういうものです。
Tim McEwanからのプロのアドバイス:ボーカルを除くほとんどの要素にごくわずかなサイドチェーンをかけましょう。パッドやキーボードを持ち上げてもドラムをかき消すことなく、キックやスネアのパンチを維持できます。

まとめ
McEwanのミキシング哲学の根底にあるのは、好奇心とコントロールです。彼はすべてのコンプレッサー、リミッター、EQを独自の個性を持つ固有の「声」として扱っています。それぞれがトランジェントやトーンにどう反応するかを深く学ぶことで、より迅速かつ自信を持ってミックスできる信頼のおけるツール群を築き上げました。
彼にとって、Plugin Allianceは透明性とキャラクターのバランスを象徴する存在です。演奏の感情をそのまま残しながら、プロダクションに現代的なインパクトを与えるのに役立っています。『Syndicate』がThe Midnightのクリエイティブな世界を広げ続ける中、彼の制作アプローチは明瞭さ、躍動感、そして本物らしさに焦点を当て続けています。