|Danny Turner

Richard Devine:音楽制作の軌跡

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Richard Devine: A history of making music

25年にわたるキャリアの中で、エレクトロニック・ミュージックのパイオニアであるRichard Devineは、最先端の音楽テクノロジーと卓越したサウンドデザインへの飽くなき探求の代名詞となってきました。長年にわたりNative Instrumentsのコラボレーターおよびコントリビューターを務める彼は熱心なユーザーでもあり、REAKTOR BLOCKSの「modular in the box(DAW内で完結するモジュラー)」という美学や独創的なユーザーコミュニティを特に絶賛しています。

アトランタを拠点とするプロデューサー兼サウンドデザイナーのRichard Devineは、Coil、SPK、Meat Beat Manifestoといった80年代の破壊的なインダストリアルバンドによる容赦のない機械化されたリズムに傾倒する前、ヒップホップやパンクの周辺に身を置いていました。エレクトロニックな実験と緻密にコントロールされた混沌へと歩みを進めたDevineは、やがてAphex TwinやWarp、Skam、Rephlexレーベルの先駆的アーティストたちが広めた90年代のIDMシーンと足並みを揃えていくことになります。

Devineはキャリアの初期からアナログモジュラー機器とコンピューターの双方を取り入れていましたが、Atlanta College of ArtのDon Hassler教授との出会いによって、コンピューターシンセシスとデジタル信号処理の真の創造的ポテンシャルに目覚めることとなりました。その後、サウンドデザインの科学に魅了されたDevineは、デビューアルバムLipswitch(2000年)や近作RISP(2012年)など、極めて複雑で先見性に満ちたソロアルバムの数々で限界を押し広げていきました。

商業サウンドデザイナーとしての仕事であれ、極めて先鋭的な音楽制作ツールを開発者と共同開発する作業であれ、ソフトウェアはDevineの芸術的アウトプットとプロとしてのキャリアにおいて極めて重要な役割を果たし続けています。アナログとデジタルが融合したハイブリッドスタジオでNative Instrumentsのインタビューに応じたDevineが、自身のエレクトロニック・ミュージックの歴史、THRILL、BLOCKS、KONTAKTが彼のセットアップにどのように組み込まれているか、そして360°オーディオフォーマットのミキシングに冷静に向き合う方法について語ってくれました。

スタジオでモジュラーシンセサイザーに囲まれデスクに座るRichard Devine

アナログとの出会い

最初はアナログシンセサイザーを使っていました。初めて買ったのはARP 2600で、セミモジュラー・シンセだったのでシンセサイザーへの入り口としては少し変わっていましたね。ですが、それがきっかけで音作りやサウンドデザインの世界、シンセシスの基礎に足を踏み入れることになりました。リングモジュレーション、周波数変調(FM)、振幅変調(AM)、リバーブ、エンベロープ・ジェネレーター、ラグ・プロセッサー、サンプル&ホールドなど、実に多くのことを学びました。

そうした要素の多くが内蔵されたシンセを持っていなければ、これらの概念を理解するのはもっと難しかったでしょう。パッチングをしたりフェーダーを動かして音を作ったりと、無限の組み合わせを試すことができましたし、信号の流れが図式化されていたので、モジュール間で信号がどのように構成されているかを視覚的・物理的に把握できました。その基礎は、モジュラーであれセミモジュラー楽器であれ、現在の私の頭の中にしっかりと根付いています。

コンピューターシンセシスの新たな世界

私はすでにモジュラーシンセサイザーやコンピューターをかなり使い込んでいましたが、Atlanta College of ArtでDon Hassler教授に出会ったことで、まったく新しい世界を知ることになりました。教授はモジュラーシンセシス、コンピューターシンセシス、DSP処理、Max/MSP、SuperCollider、Pure Dataなどを教えていました。これらは仮想環境の中で、モジュラーの世界と非常によく似た方法でシステムを構築できる、より深遠なビルディングブロック環境です。

私にSuperColliderとCsoundを教えてくれたのはDonでした。これは私にとって大きな転換期となりました。それまでコンピューターで聴いていた音にはあまり感銘を受けていなかったからです。当時のコンピューターは多かれ少なかれデジタルテープレコーダーのようなもので、クリエイティブなシーケンスや高度なシンセシスを生成するためのツールは多くありませんでした。DonがSuperCollider(音響に特化したプログラミング言語)を見せてくれたとき、そこには物理モデリングからKlang(正弦波オシレーターバンク)、高度なFFTベースの処理、そして極めて洗練されたグラニュラーシンセシスまで、あらゆるものが揃っていました。

それらのサウンドは、一般的なコンピューターの音というイメージからかけ離れたものでした。SuperColliderの「FM Landscape」というパッチをよく覚えています。別世界のようで有機的、刻一刻と変化し、美しく滴り蜘蛛の巣のように張り巡らされたサウンドを生み出すパッチでした。私が往年のYamahaシンセで何年もプログラミングしてきた経験をもってしても、わずか数キロバイトのメモリーで動作するこのパッチの足元にも及びませんでした。

スタジオの役割

私のスタジオには膨大な機材が詰め込まれていてかなりクレイジーですが、見せびらかすために置いているわけではありません。いつでも即座に録音できるよう、機材の電源は常に入っておりスタンバイ状態になるよう整理しています。サンプル編集用、効果音作成用、そしてデスクが置かれたミキシングやエンジニアリング用とエリアを分けています。しかし、これほど機材が揃っていても、制約があって1つか2つのインストゥルメントやソフトウェア環境だけに集中できるときのほうが、はるかにクリエイティブになれるのです。

基本的に、自分が熟知している機材だけを手元に残すようにしており、どの機材も目隠しをしてもプログラミングできるほどです。企業が私のところへ聞いたこともないような楽器を持ってきて、サウンドを作ってほしいと依頼してくることがあります。たいていの場合、彼らは自社の楽器がどれほど素晴らしいサウンドを出せるのかさえ把握していません。そのため、私の仕事はその楽器のスウィートスポットを見つけ出し、何ができるのかを突き止め、ユーザーに幅広い音のパレットを提供することなのです。

シンセや新しい楽器を購入したときには、誰もがそうするべきだと私は思っています。パーカッション、ストリングス、パッド、ベースなど、楽曲を構成するあらゆる要素に基づいて、音のキャンバス全体を描き出すのです。その楽器の長所と短所を耳でしっかりと把握できれば、その楽器の本質が見え始めてくるので非常に役に立ちます。

パッチケーブルと点灯するLEDライトを備えたユーロラック・モジュラーシンセサイザーのパネル接写
Richard Devineのスタジオでモジュラーシンセサイザーのハードウェアジャックに接続されたパッチケーブル
Richard Devineのモジュラーシンセサイザーに並ぶノブ、スライダー、パッチコードの詳細

サウンドデザインのプロジェクト

多くの人は私が一日中シンセサイザーをいじって遊んでいるだけだと思っているかもしれませんが、実際には音楽業界とはまったく異なる多種多様なソフトウェアやハードウェア環境に向けた、非常に高度なサウンドデザインを手がけています。テレビ、映画、ビデオゲーム会社向けのサウンドデザインや作曲も数多く行っていますが、個人の音楽制作は完全に切り離すようにしています。一日中サウンドデザインの仕事をした後、自分の音楽を作る時間が解放の場になっているのです。

昨年はGoogleのDaydream向けにアンビソニックスVRオーディオを制作していました。主にHTC ViveのVRシステム上でヘッドホンを使いながら作業し、多くの人がGoogleアプリで体験することになる小さなインイヤー型イヤホンでも試聴していました。その小さなイヤホンで最高の音を鳴らしつつ、HRTF(頭部伝達関数)フォーマットによる360°オーディオでミックスする方法を考え出す必要がありました。それはサラウンドサウンドや5.1ch、7.1chとはまったく異なる異質な新環境でした。空間内で頭を回したり、XYの垂直軸で上下に傾けたりするのに追従する複雑なフィルターを扱う必要があります。現実世界で起きるこれら特異な物理現象を、コードとソフトウェアを駆使して再現し、リアルで説得力のある音に仕上げなければならなかったのです。

サウンドロゴの制作

私の仕事の中で最も難易度が高いものの1つが、企業から2〜3秒のサウンドロゴ制作を依頼されたときです。クライアントから送られてくる12ページにも及ぶ概要書には、企業の歴史やサウンドに盛り込むべきあらゆる要素が記されています。普段は「これをどうやって2秒の中に収めればいいんだ?」と考え込んでしまいますし、極めて困難な挑戦になります。

それはまるで言語のようなものです。選んだ音色と組み合わされた2〜3音のはっきりとした音符を聴いただけで、リスナーがその企業の理念や感情を明確に感じ取れるようにしなければなりません。過去に着信音もいくつか制作しましたが、それも似たような考え方です。また、限られたパラメーターや物理的特性しか持たない指定のデバイス上で、そのサウンドをいかに最適な状態で再生させるかという課題もクリアしなければならず、これも実に一筋縄ではいきません。

Native Instrumentsとの出会い

Native Instrumentsと最初に出会った当時、彼らのソフトウェア製品は「Generator」の1つだけでした。私は60 MHzの東芝製ノートPCでライブ演奏を行い、Generatorを使ってサンプルベースのドラムマシンを構築していました。Max/MSPでもパッチを組んでいましたが、大音量のPAシステムで良い音を鳴らすことができませんでした。Generatorでシンセやドラムマシンをベースにしたインストゥルメントを構築し始めると、サウンドは格段にパンチがあり、太く、迫力のあるものになりました。NIから「企業向けにサウンドやパッチを制作した経験はあるか」と尋ねられたのを機に、彼らとBatteryライブラリの制作を始め、KontaktやAbsynth、さらにはFM7、FM8、Massive、そしてReaktor Vol. 1&2向けの様々なエレクトロニック・インストゥルメントの初期拡張音源ライブラリの制作に携わりました。

私にとって、彼らはこれまで出会った中でも最もプロフェッショナルな企業の一つです。イノベーションだけでなくサウンドクオリティも追求しており、良い音を鳴らすことに関して私はかなりのこだわりを持っています。私が使うソフトウェアの多くは設計としては優れていても、出音のクオリティが追いついていないことがよくあります。NI製品は音質が極めて高く、だからこそ私は常に彼らの製品を使い続けているのです。たとえサウンドデザイナーとして彼らと仕事をしていなかったとしても、自分の作品にそのレベルの品質を求めるのであれば、間違いなくNI製品を使っていたでしょう。

Native Instrumentsソフトウェアの奥深さも実に素晴らしい点です。プリセットマシンとして使ったり、プリセットを少し調整するだけでも使えますが、より深く掘り下げたい場合には、独自のサウンドをプログラミングしたり、内部構造を徹底的に探求して極めて複雑でオーダーメイドのようなソリューションを生み出したりするための無数の選択肢が用意されています。Razor、Absynth、Reaktorのいずれを使っていても、この理念が一貫して貫かれているところが気に入っています。

スタジオのコンピューターで音楽制作とサウンドデザインに取り組むRichard Devine

REAKTOR BLOCKSの活用

Reaktor 6にReaktor Blocksのコンセプトが導入され、アナログシンセのパッチング体験をReaktor内へと持ち込む自己完結型システムが実現したときは最高でした。オシレーター、VCA、フィルターといったアナログ回路ブロックを用い、こうした音源生成デバイスや音響操作デバイスをドラッグ&ドロップで扱えるシステムへとシンプルにまとめるというアイデアは、最下層のレベルからすべてを構築するよりもはるかに理にかなっています。

私にとって一番大変だったのは、友人たちを納得させることでした。彼らはReaktorを使うことでどれほどのパワーが得られるかを理解していなかったのです。Blocksのフォーマットが登場したとき、彼らにも理解しやすく親しみやすかったため、ついに飛びついてきました。イベントディバイダーや算術演算子とにらめっこする必要はなくなり、ケーブルをパッチングするだけですぐに音を鳴らすことができるようになったのです。Reaktor Blocksは多くの人々にとって大きな転換点になったと思いますし、私自身も数多くのBlocksインストゥルメントを構築してきたので実に素晴らしい出来事でした。遊び感覚でウェーブテーブルシンセサイザーやシンセドラムシーケンサーのモジュールをReaktor Blocks Factory Libraryにアップロードしたこともありますが、サウンドデザインや自身の音楽制作で使っている自作モジュールはまだまだ山のようにあります。リリース当初から愛用しており、常に手放せない存在です。

BLOCKSのパッチング

Reaktor Blocksならパッチングも非常に簡単です。モジュラーをパッチングする際は物理的なケーブルを使いますが、ここで重要なのはモジュール同士の相互作用です。Blocksのように各モジュールに出入りするコントロールボルテージ(CV)を視覚的に確認できる機能が、モジュラーハードウェアにもあればいいのにと思うことがあります。複数のデバイスにわたってモジュレーションしたいパラメーターの範囲を瞬時に設定し、それを視覚的に把握することができますが、これはEurorackでは不可能です。私が最も興味を惹かれるのはモジュール間の相互作用であり、様々な組み合わせを試しながら、これまでに聴いたこともない新しいサウンドを生み出す源としてReaktor Blocksを活用しています。

プリセットを保存できるという点も、非常に大きいです。モジュラーシンセの場合、一度パッチケーブルを抜いてしまえば、そのサウンドは二度と戻りません。どのモジュールを使い、どうパッチングしたかを細かく書き留めておいたことが何度もありますが、それでも以前と同じ音にはなりませんでした。しかし、それこそがモジュラーの性質でもあります。回路であれ部屋の温度であれ、様々な要因がお互いの相互作用を劇的に変化させるため、全く同じ結果が得られることは二度とありません。それは素晴らしくもあり、恐ろしくもあります[笑]。ですが、特にクライアントが気に入ったサウンドを後から再現したい場合などに、リコールができることは私にとって極めて重要なのです。

REAKTORのライブラリコミュニティとMUTEKコンペティション

私はほぼ毎晩のようにReaktor User Libraryをチェックして新しいインストゥルメントを探していますし、Rick Scottをはじめとする、本当にクールなReaktorインストゥルメントを制作している多くのデザイナーたちと実際に仕事をしてきました。ユーザーが作成したBlocksやシーケンサー、サンプラーといった新しいツールを常に探していて、ここは無料のインストゥルメントや新しいアイデアを得るための素晴らしいリソースとなっています。時にはディレイやフィルター、新しいBlockをダウンロードして、自分では思いもよらなかったような似たものを構築したり、他人のアイデアをベースにまったく新しいBlockやインストゥルメントを作ったりもします。

実は今年後半に、サンフランシスコとモントリオールで開催されるMUTEKで、Reaktorインストゥルメントのデザイナーを対象としたコンペティションに参加する予定です。他の3〜4名とともに審査員を務めます。それぞれのインストゥルメントを聴き、パフォーマンスの高さ、演奏性、機能性、そしてNIが設定するその他の基準に基づいて審査します。きっと素晴らしいイベントになるでしょうし、そこから何が生まれるのか、そしてReaktorコミュニティにより多くの注目が集まることを楽しみにしています。

KONTAKTへの愛着

私はKontaktを頻繁に使用しており、その内蔵ライブラリも多用しています。サウンドデザインのプロジェクトでは常に使っているAction StrikesやRise & Hitがお気に入りです。タイミングを自在に調整できるウーシュやライザー/スティンガー/インパクトサウンドを作るのに最適です。秒数を指定して、CMのシーンであれビデオゲームであれ、作業中の映像に完璧にタイミングを合わせたトランジションヒットを作ることができます。Drumlabもパーカッション用途で重宝していますし、他にもHeavyocity Damageや、Output Substance、Analog Strings、Exhale、Revなども大いに活用しています。私は日常的にKontaktライブラリを使用しており、自作のカスタムライブラリと並んで、私のクリエイティブなサウンドデザインのプロセスにおいて欠かせない存在となっています。

THRILLの活用

Thrillがリリースされた時、私は本当に衝撃を受けました。サウンドデザイナーとして、これらは普段スクラッチから作り出さなければならないサウンドばかりですが、Thrillの真に素晴らしい点は、音が途切れず持続するということです。当たり前のように聞こえるかもしれませんが、シンセシスとサンプルのレイヤーを生成し、一定に保たれるクラスタリングやドローンを作り出すのは非常に難しいのです。映画の現場では特定の時間に合わせた変則的な制約の中で作業することが多いのですが、サンプルライブラリは素材が録音された長さの制限を受けます。つまり、シーンにフィットするシームレスなループを作るために、クロスフェードをかけたり20分もの編集作業を行ったりしなければならないことがよくあります。しかしThrillなら持続的に鳴り続けるため、任意の長さでステムを書き出すことができるのです。

インターフェイスは非常に使いやすいです。緊張感を高めるためにサウンドの強度を変化させることができるXYバーグラフが備わっており、驚くほど表現豊かでシンプルに操作できます。クオリティが信じられないほど高く、一部のプリセットの深みも圧倒的で、トラックに配置してあちこち少し微調整する以外、ほとんど何もする必要がありません。テレビ番組のサウンドデザインプロジェクトにおいて、これは私にとって画期的なツールとなりました。

Richard Devineの最新LPはTimesigより9〜10月にリリース予定

写真クレジット:Benn Jordan

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